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由奈さんの言葉を聞いてあからさまに顔をしかめる桜。
「心配しなくても大丈夫よ。村の人達だって頻繁に通ってるし、わたしが村に住み着いてから五年間、一度も事故なんて起きたことないんだから」
「それなら良いですけど……」
からからと笑いながら由奈さんが言うと、不安を拭いきれない様子ながらも桜は引き下がる。
「つり橋って、ドラマとかだとよく落ちたりするからなぁ」
「桜くん、ちょっと怖がり過ぎだよ。そんなのは所詮ドラマや小説の中で起きる話さ。現実でそう簡単に橋が落ちてたら、それこそ問題になるよ」
助手席に座る野島部長が肩越しに振り向き笑顔をみせた。
その日の気分で眼鏡とコンタクトを使い分けているらしいが、どうやら今日はコンタクトの気分らしい。
「それくらいわかってますけどぉ」
唇を尖らせ、不満そうに告げる桜。
そんな彼女を見つめながら、部長は言葉を言い添える。
「それに、今回はつり橋なんかじゃなくて村に伝わる言い伝えを調べに来たんでしょう? こんなとこで怖じ気づいてる場合じゃないよ」
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