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「別に怖じ気づいてなんかいません。もう、部長は前向いてて下さいよ」
「あはは、ごめんごめん」
咎められ、部長は楽しそうに笑いながら頭を前に戻す。
「はぁ……。ところで、乃亜ちゃんさっきからずっと目瞑ってるけど具合でも悪いの?」
からかわれてる感じに嫌気がさしたか、適当に話題をすり替えるように桜は終始黙り込んだままの人物へと話を振った。
後部座席右側。
そこで、全く会話に参加する意思を見せずに、静かに目を閉じている小柄な少女。
俺たちの後輩で、今年唯一の新入部員でもある一年生。
蓮田 乃亜(はすだ のあ)。
ミディアムショートの髪に、日焼けとは無縁で生きてきたとでも言うような白い肌。
その辺の廃屋にでも置いておけば、精巧に作られた人形と勘違いしてしまいそうな容姿だ。
「……乃亜ちゃ~ん、起きてるぅ?」
無反応な後輩に、僅かに遠慮がちな口調になりながら桜が再度声をかける。
すると、まるで永い眠りから覚めた白雪姫のような緩慢な動きで、蓮田がゆっくりとその瞼を上げた。
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