‡プロローグ‡

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「起きてます」 ユルリと目だけを桜に向け、抑揚のない声で蓮田が呟く。 「ええっと……、具合とか、悪かったりする?」 感情のない表情で見つめ返され、堪らず顔を強張らせる桜だったが、それでも何とか会話を続けようと試みる。 「いえ、特には。至って普通ですけど」 「ああ、そう……。ずっとリアクションがないから気になってたのよ。車酔いとかしてないかな~、なんて」 「そうでしたか」 「う、うん。そうなの……」 桜の健闘虚しく、会話はそれで終わった。 蓮田は再び目を閉じると、何事もなかったかのように静かに呼吸だけを繰り返し始める。 「…………常々思ってたことだけど、あたし乃亜ちゃんのキャラクターだけは掴めそうにないわ」 動かなくなった蓮田を眺めたまま、呻くように桜が言う。 (その気持ちはわかるけどな) 後部座席の真ん中。 女子二人に挟まれるかたちで座っている俺、長沢 雄治(ながさわ ゆうじ)は胸中で同意する。 確かに蓮田 乃亜は、よくわからないことが多すぎる。
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