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「お、いいタイミング」
淡雪は立ち上がると、散乱する服を踏みつけ、食器は避けて玄関に向かった。
がちゃりとドアが開く音と、聞きなれた声。
「よお、淡雪」
「やあ、宗太。ゆうちゃんもいるよ」
「だろうと思った」
そんな、普通の会話の一瞬後。
「お、おい! なんだこの部屋っ。空き巣か!」
「違うよ、みゆきちゃんだよ」
「はあ? ……あ、優莉(ゆうり)、お疲れ」
部屋に入ってきた村崎は、私に向かって片手を上げた。私も片手をあげてみせる。
「お疲れ」
「優莉、足とか怪我してない?」
「私は大丈夫」
「僕は少し切ったよ」
「おまえはいいんだよ、自業自得だろ」
どうやら、村崎は何の説明もなしに、みゆきちゃんについて悟ったらしい。
「ひどいよ、宗太もゆうちゃんもさ。自業自得自業自得って。全然そんなことないのに」
「はいはい」
村崎は適当に聞き流すと、私の隣に腰掛けた。一瞬、心臓がどきりと跳ねる。私はさりげなく村崎から少しだけ離れて座り直した。
村崎は全く気がつく様子もなく、淡雪に向けて切り出した。
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