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朝礼後、二人が何とも言えない空気を纏いながら休憩室に消えたのを確認すると、相原君も小銭を持って後を追った。
“コーヒーを買いに来たけど取り込み中で入れなかった”的に入口から中の様子を窺おうと。
しかし。
廊下は先客でごった返していた。
(相原君以外みんな女の子だ)
「ちゃんと答えろよ!」
突然響いた崎田さんの怒声に、相原君も飛び上がる。
戸川の返事が聞き取れない。
全員が鼻の穴を膨らませてにじり寄った。
「道でキスまで……、彼女の部屋から出てこなかっただろ!」
再び響いた崎田さんの怒声。
廊下の聴衆に衝撃が走った。
“道でキス”
“部屋から出てこなかった”
あの、女嫌いの戸川君が。
そんなことを??
聞き耳を立てる女の子達の目がさらに血走る中、決定打が響いた。
「僕は彼女と婚約してたんだからな!」
おお……!
婚約。
そのセンセーショナルな響きに、廊下に声なきどよめきが広がった。
皆が無声で身悶えする中、どす黒い空気を醸すのは小野寺・渡辺組。
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