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ようやく休憩室から出てきた戸川が、廊下で群がる女子をじろりと一瞥して大部屋に戻っていった。
その戸川の後ろ姿に“ほぅ…っ”と女子の熱い溜め息が漏れた。
たぶんお姉様方の脳内では悩ましい妄想が渦巻いてるんだろう。
その後、午前中のうちに、この悶着は海事内に知れ渡った。
要約すると、こんなこと。
“戸川君が崎田さんの婚約者を強奪して路上チューの上、お泊り”
戸川は着任早々の騒ぎにうんざりした様子で、女子からの質問を煩そうに無視していた。
でも、何かが匂う。
崎田さんに向ける視線に込められた闘志が。
こんな風に戸川が感情的になるのは見たことがない。
相手は、たぶん社内の子だ。
よし。
いったい誰なのか、相原君の観察眼で捜し当ててやろう。
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