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「あっ、片桐主任、成瀬ちゃんにえらく馴れ馴れしいぞ!」
一瞬戸川の肩が揺れたけど視線は動かさず、かろうじて耐えた。
「片桐主任に下心はないだろ」
見ればいいのに、なんでそんなにやせ我慢するんだろう。
突如隣の女子が奇声を上げた。
片桐王子が現在彼女はいないと言ったらしい。
戸川の眉間に皺が寄り始めた。
「片桐主任、フリーだって」
王子の会話に騒ぐ女子達の声は確実に戸川にも聞こえてるはずだけど、わざと復唱する。
我ながらかなりウザい。
「え、成瀬ちゃんがタイプ?」
突如、戸川っちの食べる速度が早くなった。さらに水ガブ飲み。
「なんか、成瀬ちゃんが元カノに似てるって言ってるよ」
わぁ、戸川っちの眉間の皺が……。
しつこく言い過ぎたか、さすがに怖い。
「……似てねーよ」
地の底から響いてくるような重低音でボソリと戸川っちが唸った。
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