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戸川着任日の朝。
海事の前に総務に寄っていたらしい戸川がようやく大部屋に入ってきた。
来た来た。
あの人目を引くダークなオーラ。
片桐王子と比較して、一時「黒王子」とまで言われていた。
相原君もフェロモンはともかく、オーラが欲しい。黒でも白でもいいから。
二年前と変わらない長身。
(当たり前か)
アメリカだったら、ピザとコーラでデブって帰って来るかと思ってたのに、水泳選手みたいな体型も相変わらず(少し残念だ)。
遠巻きに見ている女子の奇声が聞こえた。
……うわ。
由里ちゃんの食い付くような目が怖い。
渡辺由里ちゃんは、戸川の大昔の元カノらしい。
強力な縁故を持つお嬢様で、戸川を追い掛けて入社してきたとか。
この相原君とは滅多に喋ってくれない、ある意味目的意識のはっきりした子だ。
戸川は彼女が鬱陶しいらしく、端から見ててハラハラするほど冷たい。
なのに彼女は戸川が留学でいない間、「戸川を唯一落とした女」を自称して色々と好きに吹聴していた。
だから彼女、重鎮様方からはよく思われていない。
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