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思わぬタイミングでの登場に、僕は口を閉ざすしかなくなり、舌を噛んだ。
振り向きざまに見た、もうどうでもいいと言うようなアヤネの表情に、拳を強く握る。
「若い衆って、おじさんな発言ですね先生」
「あぁ、俺はおじさんですよ。そういや三日月、例の学校サイト作り、どこまで進んだか、音楽の西川先生が知りたがってたぞ」
今まで激しい討論が繰り広げられていたとはつゆ知らず、諏訪部先生は、さっき僕らが取り組んでいた活動の経過を伺う。
因みに、先生たちの間でも西川先生が2人いるのはややこしいのか、いちいち担当教科を付けてから言う。
もう一人の西川先生は英語の西川だ。
「さっきなおくんがパパッと終わらせちゃったよ」
「お、雲川、もう終わったのか?そんなに簡単にできるものなのか?」
日光が減ってきたので、部屋の照明を点けてから、諏訪部先生が僕のパソコンの画面を覗く。
この先生はパソコンを仕事以外でもそれなりに使う先生だったが、それでも常人、カゲの方が詳しい。
「これでもパソコン操作だけは誰にも負けないですから」
「ほ~、大したもんだな」
先生は僕のパソコンから、ほぼ完成したサイトで適当にページを巡りながら、その完成度に目を見張っていた。
「ま、文章のマトメは三日月が担当ですけどね……」
「一晩で纏めきりましたよ」
自分ばかりが褒められるのもむずかゆかったので、マジメな僕は先生に事実を報告したところ、アヤネは間髪入れずに胸を張る。
先生の目が僕に行ってるときは静かにしてたくせにコイツ。
「そうか、凄いけど、お前らちゃんと勉強してちゃんと寝ろよ」
「分かってます」
とは言うものの、僕らは夜は四時間くらいしか寝ない日が多い。
大体がパソコンに向かっている。
例えばカゲはこれでも隠れオタク、アニメは勿論、特に銃火器に付いて調べていることが多い。これは親友だからこそ知ることが出来た事実で、初めて知った時は驚いたような納得したような……。
アヤネも目の下にクマを作っている時点で、僕らと同類だと予測している。
そして僕も、夜の間は大体ハッカーとしてのとある作業に追われている……。
「それじゃあ、この事は俺から先生に知らせておく。悪いが明日の準備でここを使うから、今日は解散にしてくれ」
翌日の理科の授業の為、僕らはいつもより早い解散となった。
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