1人が本棚に入れています
本棚に追加
まだやや日が見えるくらいの時間帯、僕は家に帰りついて自転車を車庫の後ろに止める。
僕の家は、この辺ではあまり多くない新築。
カゲを連れてきた時はやや正方形で黄色い見た目に驚かれたことだ。
「ただいま」
車が止まっていたのを見て、帰っているだろうと思ってそう言えば、案の定、家の奥から父親の声が聞こえた。
「よう、もう学校終わったのか」
「まぁね。すぐ飯にするから。買い物終わってんの?」
「おー。豚肉安かったから買っといたぞ」
靴を脱いで進むと、居間で何やらガチャガチャとプラモデルを組み立てている父、雲川 大輔の姿があった。
決してただ趣味に興じている訳ではない。
僕はこの父と2人暮らしをしている。
昼間、父が働いている電気屋はあまり給料が高くないのだが、いよいよ切羽詰って売りに出した父の某機動戦士のプラモコレクションをネットオークションにかけたところ、これが大当たり。
今では趣味で作っては売り、さらにその器用さを生かして、息抜きと評してアクセサリーまで作っている。
注文を受けることもあり、まさに今はその作業中。
「豚肉かぁ。蓮根ある?」
「おう。こないだ貰ったのがまだあるはず……今日はあれか?」
「うん、あれが一番楽だしうまい」
あれ、とは豚肉と蓮根を炒めてウスターソースで味付けするだけの料理である。
しゃきしゃきした蓮根と豚肉の脂身がなかなか合うのだが、置いておくと白い塊が皿に溢れるほどに脂が多い。
今日の献立の一部が決定したところで、僕は二階の自分の部屋に上がった。
熱い制服を脱ぎ、紺のTシャツと短パンと言う夏スタイルに着替えると、階段を駆け下りて台所に立った。
「お、ペプシあるじゃん」
「1人であんま飲むなよ~」
冷蔵庫を覗くと、中に1.5Lボトルに入った黒い炭酸飲料が存在を主張しているのが目に入り、僕は目を輝かせる。
僕も父も、このノンカロリー飲料が三度の飯より好きなのだ。
殆ど泡を呑むかのような炭酸の量で好みが分かれるが、父もこれが好きで酒をやめたくらい。
僕はそれをコップに注いで、泡立つそれを一気に口に入れ、のどを通す。
「うへぇ~ぇ」
のどが焼けるかのような刺激を堪能してから、思い切りげっぷをする。汚いとか、家で気にする気は毛頭ないのだ。
そして、夏対策を講じた後は、僕はフライパンを取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!