自称ハッカー

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机に一度広げた教科書をバッグに放り込んでいく。 じりじりと皮膚を射す紫外線が絶好調な季節、カッターシャツの袖を引っ張り、少しでも皮膚を守ろうとバッグにノートを投げ入れる少年、雲川直(くもかわなお)は、太陽を睨んだ。 生まれつきの栗色のボサボサ髪、目の下のクマはここ一年は取れないままだ。 僕はインテリキャラなのだ、日焼けした姿で部室に行った日には、普段以上に冷ややかな視線を受けた上に鼻で笑われるという屈辱を受けかねない。 しかし、生来のくじ運の悪さによって定められた自分の席は当然の如く窓側最前列。 ここ数日の直射日光で自分の皮膚が既に浅黒く変色しつつあるのに、直は気付かない。アホなのだ。 それでも直はバッグのチャックを締めると同時に意味不明な俊敏さで日陰へと逃げ延びるのだ。 「なおくん、今日も部活だったっけ?」 「そうだよカゲ、ってか予定はお前さんが決めたんじゃねぇの?」 日差しへの警戒心を解かない直の背後から聞こえた小さな声に、振り向くコンマ数秒早くも返答した直。 背後には直より頭一つばかり小柄な少年がこちらを見上げているところだった。 「そっかぁ。そうだけど。覚えてない」 小日向陽炎(こひなたかげろう)通称カゲ、これでも同級生、これでも僕の親友だ。 そして、僕の所属するパソコン同好会の会長(本人曰く部長)であり、三人居る部員の一人。 そして、何を隠そうパソコン同好会設立者である。 コイツがパソコンが好きなことすら意外だったし、まさかこいつが「部活を作ろう」などと言ってくることだって春に紅葉が散るほどの衝撃だったが、おかげでインテリらしい学校生活を送ることが出来て感謝している。 ただ、代わりに学校生活がストレスフルなものに変貌した一端でもある同好会だが、こいつのせいではないので何も言うまい。 因みに、この高校は田舎もド田舎にあるためか、生徒の機械に関しての関心が低い為、パソコン部なるものは開校以来存在しないのだという。 「それじゃあ。部室行く?」 「当然だろ、早くいくぞ」 カゲのコミュ障気味なテンポの遅い会話を早々に切り上げ、教室を出ようとした時。 「おいおい天才ハッカー。今日も悪事の時間かぁ?」 くそ、気持ち悪いのに見つかった。
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