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声を掛けてきたのは、同級生で三人組。名前は知っているが面倒なので省かせてもらう。
まぁ、ありていに説明するなら不良だ。
僕らが居たクラスは特進クラスであるが故か、階段から最も離れた場所にあるのだが、当然、階段側のクラスに居るこいつらの横を通る必要がある。
しかも残念なことに、特進クラスの更に奥には鍵の壊れた物置スペースがあり、そこは目が届きにくいためにこいつら不良の溜まり場になっていて、今はちょうどそっちに行く途中だったのだろう、なんとタイミングの悪いことか。
「おいおい天才ハッカー、そろそろペンタゴンにでもハッキング仕掛けるんですかぁ?」
「玉砕間違いなしだな」
「ぶはっ!」
例のように髪を金髪に染めたトリオが何やら勝手にはしゃいでいるのを真正面で見ているだけで恥ずかしくなってくる。
クラスの面々も『またか』と言う呆れの表れか、完全に無関心で横を通り過ぎていく。
こいつらは中学時代からの同級生だが、三年時、一緒のクラスになってしまったのが運の尽きだった。
その時、僕がクラス中に公言していた、『天才ハッカー』と言う身分を知られてからと言うもの、勘違いと共に毎日いじり通される日々となった。
……そう、僕は天才ハッカーだ。
だが、こいつらの言っている『ハッカー』とは全く別であることを知ってもらいたい。
「何度も言ってるんだが……僕はハッカーであって、クラッカーとは全く別物なんだよ」
「なになに?クラッカー?それってクッキーみたいな?」
「ちっげーよ!聞いたことあるわ。スクリプトキティとかいう」
「キティちゃんか!?」
「そうそれ!」
知ってもらいたいのだが……こいつ等との会話は一言でこの始末である。当然分かるように説明しようとしても、それより早く体力が底をつく。
インテリは体力がないのがデフォルトなのだ。
と言うか、ペンタゴン知っててなぜクラッカーがわからないのか……あと補足だが、正しくはスクリプトキディ、他人の技術でクラッキングするお子様クラッカーの事を指す蔑称の事だ。
「あ、西川先生……」
「うお、やべぇ、ブラックか?」
「ほんじゃーなー天才ハッカー」
カゲの指さす方を見ず、不良共は足早に通り過ぎていく。
意外と俊敏だな……因みに先生などどこにもいない。
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