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「何度も言ったと思うんだが、ハッカーは悪人じゃない、クラッカーと混同しないでくれ!」
近年、人気ドラマや映画の影響もあってか、メディアで『ハッカー』と言う単語を見る機会は増えた。
しかし、どういう訳かその単語が示す本来の意味とはどこか違ったニュアンスで広まってしまったことが、目下僕の一番の悩みの種だった。
本来、ハッカーとは主にコンピュータ、電気回路について幅広い技術と知識を持ち、コンピュータ上で様々なことが出来、プログラムの問題を解決、修正することが出来る、又は新たなプログラムを組むことが出来る、いわば創造者なのだ。
一方で世間一般で認知されている(嘆かわしいが)ハッカーと言う人種は、あらゆるネットワークに侵入し、個人情報を奪う、プログラムを破壊、誤作動を起こす、いわば破壊者のような存在を言うだろう。
厳密に言えば、そんな輩の事はクラッカーと呼ぶが、そう言っているのは、僕などのハッカーをはじめとした少数派だ。
だからこそ、僕はその一般人であるアヤネに事実を説く。
「悪い、あんたの話なんてロクに聞いたことなんてないわ」
「だったらもう一度言うしかないな。いいか、ちゃんと聞け」
「嫌だ」
ぐ、おのれクソアマ。
「あんたが言いたいことは大体わかるわよ。でも、私はそれに対して『現実を見ろ』と言わざるを得ない」
「現実を見てないのはお前たちの……ッ」
言いかけて、僕はたじろいだ。
話を遮るな……そう言わんばかりにアヤネが睨んできたからだ。
自分は人の話を聞かないくせに、なんたる理不尽。
「現実、即ち世論よ。カゲ、一月くらい前に話題になった『アノニマス』って、なんの集団か、小テストに出たよね」
アノニマス、昨今世界情勢を左右するとまで言われ、世界各国で大規模なクラッキング行為を行っている集団だ。
つい先月末、このアノニマスが隣国、北朝鮮に対して大規模なクラッキングを行ったことが話題になったが。
「アノニマスは。北朝鮮に対してハッキングを行った世界規模のハッカー集団である?」
因みにこの小テスト、僕は『クラッカー』と答えて正解をもらった……隅に『一応な』と、先生の一言と共に。
カゲのこの答えに、アヤネが勝ち誇るかのような表情を浮かべた。
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