俊也のお正月

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. 「タク?....ひと月の小遣いっていくら?」 2人の言い争いの途中で、突然姉ちゃんが兄貴にそんなプライバシーな質問を投げ掛けた。 「急になんだよ!?」 「昔の迷惑料を、取り敢えずひと月分の小遣いで勘弁してやろうかと。あたしって優しーっ!だから、来月分は丸々こっちに寄越しなさいよ!」 「バカか!そんな身に覚えのない昔の事でゴチャゴチャ言われても、絶対返さないからな! オレは不愉快だ!もう帰る!!」 兄貴は姉ちゃんを思い切り睨みつけて、スッと立ち上がった。 姉ちゃんはそれ以上に兄貴を睨み返していた。 「帰るのは全然いいけど、その前に謝れ!」 「あー、はいはい。どうもすいませんでしたっ!ごめんなさいねぇ!」 兄貴は全く大人げなく、顔をイーッと歪めて投げやりに謝っていた。 「そんなフザケた謝罪があるか!てか、あたしじゃない!絢子さんとトシに謝れ!」 恥ずかしい兄妹ゲンカには無関係でいたかったのに、突如呼ばれた自分達の名前に、2人で顔を見合わせて首を傾げてしまった。 「お前が、そのノータリンな頭で、何にも考えずに思った事をポンポン口にするから、2人共、折角のお正月に嫌な思いしたでしょ!それを謝れ! それに、絢子さんもトシも珍しいカタチではあるけど、協力し合ってるだけなのに、批判するような事言うな!兄なら弟を褒めてやれ!それも謝れ! それに、お前のような男が世にはびこってるから、女の社会進出に悪影響が出るんだ!それも謝れ!」 ....うわぁ。そんな事まで、コイツに謝らせるのかよ。 .
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