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タクシーに乗って、家に帰る間中、
あいつは、私の手を、離さなかった。
けれど、言葉は、一言も出てこなくて、
私も、黙ったまま。だったけど、
あいつも、黙ったまま。だった。
タクシーで、繋がれた手の熱さを感じながら、
私の頭の中は、
『会長さんのこと、じじぃ。なんてよんじゃって、クビにならないかしら?
もし、クビになったら、どうするんだろ?
一日中、家に居る?
えっと、今、あいつの荷物は、我が家にあるから、
あいつが、一日中居る家は、我が家?ってこと?
私も、ほぼ、一日中、家に居るから、
ずっと、一緒?
それは、なんか、ヤだ。
さっきから、あいつの傍にいると、心臓が、痛い。
こんなの、一日中、保たない。
私、心臓病かなぁ?明日、病院行こうかな…
余命◯ヶ月です。
とか、言われたら、どうしよう。
やっぱり、毅彦さんと、既成事実、作っとくべきだったかなぁ。
あー。毅彦さんの、タキシード姿、写真撮ってない!』
そんなことで、グルグル考えていて、
毅彦さんの、タキシード姿で、いっぱいだった。
だから、
肝心の、対策を、
すっかり、忘れていた。
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