959人が本棚に入れています
本棚に追加
「早くしろよ!てめ、いつまで化粧に時間かけてんだよ?!」
俺が、高校を卒業した春、
また新たな門出を迎える人達がいる。
「広人!今、あんた、母さんに向かって、″てめ″ って言ったね!」
「言いたくなるさ、主役でもないのに、なぁに厚く塗りたくってんだよ?メイクじゃシワなんか隠れねーよ」
母さんは、歳に相応しくないポニーテールをし、頑張って若作りをしている。
「……早馬の会社に就職できたからって、調子にのってんじゃないわよ!
あんたのケツの青アザ、まだ残ってるの知ってるんだからね!」
「レベルの低い脅しかけてねーで、ほら、皆待ってるから、行くぞ」
「そんな、ちゃんとした結婚式じゃないんだからさ、ちょっとくらい遅れたって…………」
「そんなんだから、すぐに男にフラレるんだよ!」
「式が終わったら覚悟しなよ」
母さんは、市役所で働いてた 男とも、
1ヶ月前に別れてしまっていた。
「しかし、式場、めちゃくちゃ近所なんですけど」
今日は、肌寒さも感じない晴れ具合で、暖かい日差しが、
早馬さんと亜子さんの門出を祝福しているみたいだ。
「広人、近いんだから、車飛ばさなくていいって!!」
俺と母さんは、
車で10分もかからないお祝いの場所へ慌ただしく向かう。
そこは、
なんと、
母さんたちの母校だった。
最初のコメントを投稿しよう!