青の階段

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「広人君、スーツ着たら、なんだか…」 とても可愛いピンクのワンピースを着た佳苗は、 アイドル好きの俺と崎谷のおっさんの目を釘付けにする。 「なんだか、なんだよ?」 「ホストみたい」 「それ、誉めてねーよな?」 「佳苗ちゃん、メッチャくちゃ可愛い!写真撮らせてよ!」 おっさんが、興奮して携帯カメラをしきりに佳苗に向けるから、 後ろの奥さんの彩音さんが 「気持ち悪い声出してんなよ!」 と睨み付けていた。 相変わらず夫婦円満な家庭だ。 (どこが?) 「青翔、花嫁さん見に行こうか?」 二人目の女の子を無事出産した彩音さんは、 赤ちゃんも抱っこして、とても大変そうだ。 「青翔、にいちゃんと行こうか」 やんちゃな盛りの青翔くんは、 佳苗と俺に手を繋がれて、 白い天使に会うために長い廊下を歩く。 控え室にあたる、 旧家庭科室のドアを コンコン!と叩くと、 「どうぞ」 中から、今日の主役の声が聞こえてきた。 そこに、 お母さんと思われる年配の女性と椅子に腰掛ける、 別人のようにキレイになった(失礼) 亜子さんがいた。 「亜子、マジ キレイ!」 後から入ってきた母さんが、まず先に感嘆の声をあげた。 「…………………」 正直、 俺もビックリしたんだ。 小さいときから知っているせいか 亜子さんの事、正直、美人だとか、思ったことなくて なのに、 ホントにモデルさんみたいに綺麗だったから 声も出なくて……… 「このドレス、 前田さんが作ってくれたんだよ」 崎谷おっさんの反対を押しきって、身重の頃から、ドレスをデザインして縫製していた彩音さんは、 「亜子のこの姿、ずっと、見たかったんだよ」 誰よりも先に涙腺崩壊し始めるから、 母さんまで、貰い泣きして、俺もヤバかった。 「今度はお父さん見てくる」 佳苗は、 亜子さんのお母さんに会釈したあと、 青翔をつれて、旧家庭科室を一足先に出た。 俺たちとは違う感情があるのかもしれない。
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