青の階段

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階段で固まってしまった俺達に早馬さんが気付いて、 タキシード姿で近寄ってきた。 「昔から、ここ、喫煙所だもんな」 相変わらずの男前で、 男の俺でも見惚れてしまう。 父さんが、小学生の時に亡くなってから 祐紀おじさんにも、なかなか会えなくて 早馬さんのその背中に、 いつもお父さんの思い出を重ねていた。 ホントに、 大好きな 子供みたいな大人だった。 今度こそ、 長い愛を育んでほしい。 「お父さん、ほら、見て!」 佳苗も、ワクワクした顔で父親の反応を待っている。 昔の落書きと、 新たに足した落書きを見つめて、 ただ、 じっと、 見つめて、 ゆっくり、その彫りの深い瞳を閉じた。 「………公共の建物に落書きしてはいけませんよー」 そう言って 下を向いて笑う早馬さん。 「ペンキで落書きしてた奴がなぁに言ってんだか!」 階段に、 数滴の雫が、 キラキラと光る。 「小林君達、何してるの?」
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