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「あ、亜子!もう、そんな時間?」
私が、お母さんと旧家庭科室から出てくると、
小林君以外が、みんな、こっちを見ていた。
「そうだぞ!
主役以外は、みんな視聴覚室に入れよ」
今日の司会進行の崎谷が、
皆を、ちょっと偉そうに 顎で会場へ入るように促す。
お母さんが、そんな崎谷に改めて、
「宜しくお願いしますね」
と、頭を下げているのを見ると、
昔、小林くん達を毛嫌いしていた過去が、
まるで嘘みたいだと思った。
「小さな披露宴だからって、好き勝手に進めるんじゃないよ?」
奥さんの前田さんが、
ポン!と、その夫の背中を押すと
「好き勝手どころか、めちゃくちゃ緊張しとるわ!」
いつも適当な崎谷が、珍しく弱音を吐いた。
「あんたが噛んだり、とちったら代わってやるからさー」
「縁起でもねー事いうんじゃないよ、お前は青翔とせっせと写真撮影に専念しろや」
「誰が司会のおっさん撮るかよ」
そして、やっぱり、前田さんと崎谷は、
とても、お似合いの夫婦だと思う。
「じゃ、亜子
あとでね」
みんなが、その場を去り
小林君と二人きりになってしまった。
「寒そうだな、花嫁の衣装って」
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