青の階段

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六年前、 再会して、授業参観に紛れ込んで、この場所に訪れたとき、 懐かしいのに、なぜだか悲しかった。 自分達の歩んできた道のりが、正しかったのか 失敗を経験して、 まだ、 自信がなかったからだ。 思い出を振り返っては、前に進めない。 そう思っていた___ 「行こうか」 二度目の小林くんのその言葉に、引っ張られるように、ゆっくり足を運ぶ。 向かう場所は、 温かで、和やかな、みんながいる場所。 「早馬くん、亜子を宜しくお願いします」 お父さんから、 再び、小林くんの腕をとる。 屋上から続く階段の影は、 私たちの足元まで、長く、太く延びていた。 私達がこれから進む階段は、 もしかしたら とても急に角度をあげるかもしれないし、 時折、前が見えなくなるほどの 螺旋になるかもしれない。 それでも、 「けして、若くはない新郎新婦の登場でーす」 「バカ崎谷!」「母さん、しっ!」 もう、 昇ることは怖くない。 失ったものが大きい私達は、 けして、 急いでは それを昇らないから。 『亜子!』 『早馬をよろしく』 「………………亜子?」 今、階段の方から 直也と、杏と、 祐紀さんの声が聞こえたような気がした。 「………………ぅん、任せて」 うんと大人になった今でも、 自分の負い目や、生まれてしまった後悔から 急に寂しくなって あの頃の皆に、会いたくなる時があったの。 だけど、 もう一人じゃない。 最後に、 もう一度、 みんなが生きていた証の場所を振り返る。 今度は みんなの、 今と変わらない笑い声が聞こえたような気がした。 そこは、 やっぱり、長くて、深くて 青くて、 絶え間なく キラキラしていたの。 。°..*°.。°.°「Deep love青の階段」 °.*°.*.。°.*おわり°。*°。* * image=479710853.jpg
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