夏彦・40歳

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時はまだ、春まだ遠い空模様の肌寒い朝でありました。 私は昨夜(ゆうべ)、東京駅から寝台特急サンライズ瀬戸号に乗りまして、四国へ行くことを決めました。 四国霊場八十八札所めぐりの旅に出るために、私は、妻子を…仕事を…そして…安定した収入も…何もかもを捨てて、ひとり旅に出たのでありました。 列車は、高松駅に着きました。 私は、乗り継ぎの高徳本線の特急列車に乗る前に、駅の中にある立ち食いうどんの店で一杯300円のかけうどんで朝食を摂りました。 朝食を摂った後、私は高徳本線の特急列車『うずしお』に乗って、池谷(いけのたに)駅に向かいました。 40分から50分後に、列車は池谷駅に到着しました。 高徳本線と鳴門線の分かれ目の駅に着いた私は、同行二人(どうぎょうふたり)の白装束を身にまとい、頭には菅の傘、左の首から右側に四角の黒のショルダーバッグをかけて、左の腰には納径帳(のうきょうちょう)が入っているポーチをつけて、右手に杖を持っている姿でありました。
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