残雪ーのこりゆきー

白雪香澄

「……ねー蓮、もうやめたら？」

「なんで　香澄ももっと飲めよ　
　カンパーイ」

意外と真面目な香澄は最後まで渋っていたが、俺に半ば強引に連れて来られここにいる。

そう言う俺もグラスを少し掲げようとしたら、手が震えてうまく上がらない。

「ホラ」

もうやめなよ　と顔に貼りつけて俺を見る香澄に、
俺は悪びれもなく今掲げようとしたビールを喉に流し込む。

その様子を半ば呆れて眺める香澄に
ゴン　とグラスを置いてスツールごと向き直った。

「いーか。今日ハメ外さないといつ外すんだよ

　考えてみろ
　社会人になったら昼から飲むなんて出来ないかもしれないんだぞ」

『もう出来ないかもしれない』

その言葉に反応した香澄はたじろぎながら俺を見上げた。