1237人が本棚に入れています
本棚に追加
「ね、蓮IDカード交換しようよ!記念に」
名案!といわんばかりの香澄は
ざわめく人声に負けない程の声でそう言って俺の服を掴む。
「なんの記念だよ」
「もう!いいでしょ、
今日で使わなくなったんだし ね?」
俺を見上げるその視線に、
いつも香澄には甘いと思いながらも結局言うコトを聞いてしまう。
俺は鞄からIDカードを出して「ホラ」 と渡した。
香澄も同じように取り出して俺に握らせ、
満足そうに俺を見上げたまま笑う。
おもむろにソレ と自分のIDカードを指差した香澄は
「私がいなくて寂しいときは、これを握りしめて寝てね」
と冗談交じりに言った。
俺は手の中の薄いIDカードを一瞥すると
「…無理だろ これじゃなんも出来ないし」
とイジワルそうに目を細めて返した。
最初のコメントを投稿しよう!