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うー… と声にならない声を出して一歩俺に近づくと
「――蓮ー…」
少しはやっぱり不安だったの と消え入りそうな声で呟いた香澄は
こつんと自分の頭を俺に預けて肩を震わせた。
「――香澄 泣くの遅すぎ
皆もう泣き終わってる 」
「……いーの
…卒業で泣いてるんじゃないし」
俺は俯く香澄の肩に両手を置いて下から覗き込む。
潤んだ目が俺を捉え、
一筋涙が流れると、それを指で拭った香澄は泣き顔のまま言葉を繋いだ。
「…この門を出たらもう学生じゃなくなるけど、
お互いがんばろうね」
「…ああ」
俺は体を預けた香澄の体をそっと包んで小さく頷き、
だんだんといなくなる人波の隅で、いつまでも小さく震える香澄を抱きしめていた。
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