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香澄の手からブルーの傘を抜き取ってレジに向かおうとすると、
俺の服を少し引っ張り、
「でも、いいの?蓮は?」 と香澄は眉尻をまた少し下げて俺を見上げた。
「俺? 俺は……」
香澄から視線を外して少し彷徨わせると、
「あ これにしなよー」
そう言って指差したのは、ごく普通の紺色の傘だった。
「………なんで俺はコレなの?」
「…だって… 蓮はどこにいても目立つから……
傘まで目立ったらなんかイヤ」
(――なんだそれ)
一旦受け取ったブルーの傘を
また元の場所に置きながら、俺は香澄を一瞥する。
「それなら香澄も もっと地味なのにして」
紺色の傘を手に取って眺めていた香澄は勢いよく振り返り、
「えー…!
私は目立つ顔じゃないから、ブルーのがいいの」
「……イヤ、そんな理由じゃ納得いかない」
(――俺が目立つのが嫌なら、俺だって香澄が目立つのはイヤ。
……俺からもし離れていったらどーすんの )
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