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その言葉が耳を通る抜けると同時に
俺の手先が急速に冷たくなるのを感じた。
あれから何年も経って、
いつかは誰かのものになるということを
考えなかった訳じゃない
ただ今ここで、
それを告げられるほどの覚悟があったわけでも、なんでもなかった。
俺たちの間を風が勢いよく吹き抜け、
目の前の彼女の髪を揺らす。
―――香澄
いつになれば俺を離してくれる?
いつになったら心に残った君の場所を 埋めることができる?
「……そっか…、香澄が…」
俺を見つめる彼女から視線を逸らし、
俺は手に持った鞄を強く握りしめてポツリと呟いた。
それが今の俺の、精一杯だった。
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