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まだ仕事は残っていて、早くこの場を離れないといけないのに
……分かってても俺の瞳は遠くを映していて、立ち尽くしたままその場から動かない
空を仰いだまま 俺はポツリと呟いた。
「 まだ好き…… か
――――嫌いにはなれないんだよ………」
忘れられない別れ方をされて
こんなにも俺を縛り付けて
嫌いになれたらどんなに楽だろうと 何度も何度も思った
けどそう思う度に
脳裏に浮かぶ香澄はいつも無邪気に笑っていて
その度に、やっぱり俺にとって香澄は特別でしかないと 思い知るだけだった
―――彼女にあんな顔をさせて 俺は心底馬鹿だ
ようやく塞がり始めた傷を 自分自身の手で抉って
後ろを振り返っては立ち止まる。
そんな俺自身が情けなくて、滑稽で仕方なかった。
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