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「おー、西園寺!
めずらいしな、大学来るの
―――ゼミ?」
コートの襟を押さえながら歩く俺に後ろから声を掛けられる。
「違う
今日は彼女迎えに来ただけ」
そう言った俺に瞬時に友人の佐藤は顔をしかめ、
「はー、これだから相手の居る奴は…」と、恨めしそうに俺を見上げた。
「なんだよ、聞くんじゃなかった…
そういや今日はバレンタインだもんな
今からデート?」
「そう、うちのお姫様、今日誕生日だから」
「――今日?
へー、白雪さん今日なんだ」
そこで思い出したように、佐藤は俺に手のひらを差し出す。
「お前チョコとか貰ってないの? ナイショで一個くらいくれよ」
プライドを捨てたそのセリフに思わず笑ってしまったが、
俺はチョコをいつも断っていたから一つも持っていない。
「持ってねーよ
一つ貰ったらみんな貰わないといけないし、
今日は俺が彼女ににチョコを渡す日だから」
「え?」
「彼女とはそういう約束なの」
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