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ペンを置いた軽い音が、時計の秒針の音と重なった。
俺は脇に置いていた手紙と今書いた手紙とを折り畳むと
重ねるようにして封筒に入れる。
それを手にゆっくりと立ち上がると、もう一度寝室に足を向けた。
膝をついてベットの脇に出したままの
その小さな箱におもむろに手を伸ばす。
何枚も重なり合う一番上の一枚を取り出すと、視線をゆっくりとそれに落とした。
大学の構内で写る数年前の俺たちは
今の俺に向けて優しい笑みを浮かべていた。
(――――――)
手に持った写真をはらりと箱に落とし入れると、封筒をその上に置いてそっと蓋を閉めた。
俺はゆっくりと立ち上がり
カーテンと窓を開け、空を仰ぎ見る。
夕暮れの空にはぼんやりと白い月が浮かんでいる。
窓から風が吹き込んで、カーテンを大きく揺らした。
窓に手を掛け、うっすらと浮かぶ月を見上げると、俺は瞼を閉じる。
瞳の奥に浮かぶその笑顔に向かって 小さく呟いた。
「…さよなら、香澄」
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