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彼女がアイツの前から姿を消した時、
あの時のアイツは彼女の連絡先を何も知らなくて
――あんな荒んでいる姿を見たのは初めてだった
『そんなに好きだったんだ』
そう言った俺に浴びるように酒を飲む手を止め、
逆に訊き返してきたのには驚いた。
(好き…? 俺が…?って……
――――ホント信じられないよな)
唇の端の浮んだ笑みが
小さく吐き出された息と共に消える。
(言われるまで気付かないなんて
…マジでアホだな )
好きという感情すら持ち合わせていなかったアイツは
今日という日をどんな気持ちで迎えているのだろう
「―――…このこと、
柏原さんに言ってやろうか」
彼女を想って飲み潰れたなんて、知ったら彼女はどんな反応をするだろう。
俺はもう一度口元を上げて笑うと、身支度を整えて部屋を後にした。
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