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「ちょっとゴメン」と近付きながら一言入れると、
俺の登場に一層女子社員達が色めき立つ。
西園寺さん… と話しかけようとしてくる子たちに
「コイツ借りるね」
と笑いかけると、キャー と二つ返事で頷いて佐川を開放した。
佐川さん、後で絶対写真撮ってください と
念を押して去っていく彼女たちの後ろ姿を見ながら、笑いを堪えて口を開く。
「お前…
今の柏原さんに見られたら初日からヤバかったな 」
ニヤリと口元を上げてコイツを見る俺に、
肩を竦めて息を吐いた佐川は
「どうしろっていうんだよ、
不可抗力だろ」 と呆れた目で俺に視線を送った。
「――っていうか、
こういう日は白タキシード着るもんじゃないのかよ 」
その言葉に完全に冷めた目で俺を一瞥すると
「ゼッタイ、嫌
この格好でいるのも正直イヤなのに」
そう言って心底嫌そうに顔を歪めるコイツは
今は光沢のあるチャコールグレーのロングタキシードに身を包んでいて、
いつも見慣れてる俺でさえ 今日に相応しく煌やかで晴々しかった。
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