エピローグ

10/18
前へ
/326ページ
次へ
「――――」 一瞬目を丸くした彼女は すぐにふわりと笑みを浮かべて俺に向き直り、 「はい、任されました  私からも… 会社の佐川さんをよろしくお願いします」 そう言って笑いながら頭を下げ合う俺たちの横で 首の後ろに手を当てた佐川が 俺はガキか… とぼやいている。 俺は顔を上げて一瞬コイツにチラリと視線を送ると、 「ホント大事にしてやって   柏原さんがコイツの初恋だから」 「―――え…」 「―――お前…、」 二人同時に口を開いた瞬間、主役を探すスタッフの声が聞こえ 俺は笑みを浮かべたまま二人を残してその場を離れた。 カツン カツン という靴音に混じって 「……奇跡だよな…」 思わず口から漏れた言葉は、周りのざわめきに溶けて消える。 (お互いが特別なんて  ほとんど奇跡に近いんだよ   ――――だから大事にして ) 立ち止まってもう一度二人に視線を送ると、 今度は口に出さずに 胸の中でそう小さく呟いた。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1235人が本棚に入れています
本棚に追加