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「――――」
一瞬目を丸くした彼女は
すぐにふわりと笑みを浮かべて俺に向き直り、
「はい、任されました
私からも… 会社の佐川さんをよろしくお願いします」
そう言って笑いながら頭を下げ合う俺たちの横で
首の後ろに手を当てた佐川が 俺はガキか… とぼやいている。
俺は顔を上げて一瞬コイツにチラリと視線を送ると、
「ホント大事にしてやって
柏原さんがコイツの初恋だから」
「―――え…」
「―――お前…、」
二人同時に口を開いた瞬間、主役を探すスタッフの声が聞こえ
俺は笑みを浮かべたまま二人を残してその場を離れた。
カツン カツン という靴音に混じって
「……奇跡だよな…」
思わず口から漏れた言葉は、周りのざわめきに溶けて消える。
(お互いが特別なんて
ほとんど奇跡に近いんだよ
――――だから大事にして )
立ち止まってもう一度二人に視線を送ると、
今度は口に出さずに 胸の中でそう小さく呟いた。
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