1235人が本棚に入れています
本棚に追加
「西園寺さんは…
本当に痛いくらい香澄ちゃんが好きで
―――だから私の気持ちは心にしまって、
言うつもりはありませんでした」
彼女の眼差しを受けて
俺の目がだんだんと開いていく。
「香澄ちゃんが居なくなって、
私もあなたに会わなくなって…
だけど心の中からは、いつまでもいなくならなくて……
だから自分の中で決めたんです
――――もし、
もう一度会う事があれば言おうって 」
言葉を止め、思い出すようにどこか遠くを見た彼女は
笑みを浮かべたまま少しだけ顔を歪める。
「―――けど思いがけず再会したら…
先に西園寺さんが
「香澄は?」って訊くから……
もう何も言えなくなっちゃいました」
彼女の目は笑っていてもどこか憂いを帯びていて
あの時を思うと胸が痛むが、
今はそれよりも別の痛みが俺の胸を走る。
「だからこれで終わりか……と思ったんですけど
―――私も諦めが悪いですよね
もう一度……
もう一度もし会えたら、今度こそは……って」
庭に咲いていた桜の花びらが ふわりと俺たちの間にゆっくりと舞い落ちる。
「だから言わないと、
私にはもうこれが最後なんで
……自分でも知らないうちに、
あなたの純粋に想う気持ちに惹かれていました
――――あなたが、好きです」
最初のコメントを投稿しよう!