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目を丸くしていた彼女はフッと息を吐き出して
ほんとですね と、口元を軽く上げて笑う。
そんな彼女を俺は目を細めて見返した。
カラン カラン と大きく鐘の音が響き、俺たちは同時に顔を上げる。
彼女は慌てて俺に
「―――もう戻らないと…
お時間取らせました」
「イヤ こっちこそごめんね
…じゃ今夜、」
小さく頷いて頭を下げ、
彼女はいつぞやのように俺の横を通り過ぎる。
ただあの時と違うのは
俺たちの間に“次の約束"があること
彼女の足音が聞こえなくなった後、
鐘が鳴り響く中 俺はケータイを取り出してメモリーを開いた。
画面をスクロールして手を止める。
【 夕帆ちゃん 】
それだけが表示された画面を見つめ、編集ボタンを押した。
新しいフォルダをを作り、
そこに『春日 夕帆』を入力して決定ボタンを押す。
カチ カチ……
【グループ0
ー恋人候補ー 春日 夕帆 】
フッと笑みを浮かべてその表示を見つめると、俺はケータイをパタンと閉じた。
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