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そう言って視線を前に向けると、
今しがた迎えに来た人物が出てくるのが視界に映る。
「悪い、彼女終わったみたい、じゃーな」
そいつに別れを告げると、俺はまたコートの襟を押さえて前に向かって歩き出す。
階段を降りながら視線を彷徨わせる彼女と視線が絡んだ。
その瞬間、
ふわりと笑って彼女は俺のところを目指して少しだけ足を速める。
俺を映すその目に鼓動が逸る。
いつもより少し早い足音も、
輝くように高揚したその表情だって、俺の心を掴んで離さない。
「香澄」
俺は待ちきれず、だんだんと近づいて来る彼女の名前を呼んだ。
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