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「れーんー!」
「香澄」
俺は片方の手を口に当てて大きく声を出した。
「――卒業 おめでと 」
人波をかき分けて俺に向かって走ってきた彼女は、
息を切らしながら頬を膨らませて
「あー、ズルイ!私が先に言おうとしたのに」と肩を落とす。
あーあ、と言いつつも顔を上げた香澄は、
もう一度俺に向き直り、卒業証書の筒を少し上げて微笑んだ。
「蓮 卒業おめでとう!」
「…香澄も、おめでとう 」
そう言って俺も少し証書を掲げると、香澄の掲げた証書と合わせた。
カツン とたてた軽い音は周りのざわめきにかき消されたが、
しばらくお互いの証書を合わせたままの俺たちは
視線が絡んでどちらともなく笑った。
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