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「会社の能率が下がるのは、何かしらの不満を社員が抱えているのが原因の一つです。その不満は結果として、弱い立場の人間に向けられ発散されます。ここ近年、社会問題にもなっている会社イジメです。そこに、もっと弱い立場の者を導入することでイジメやストレス発散を一人に集中させることができます。私は、その立場になる者をロボットとして開発したのです。ただ、弱いだけではイジメの対象にならない可能性を考慮して、相手を苛立たせる電波や行動をするようにプログラムしたのです」
「なるほど、つまり、今、こうしてロボットに対して苛立ちを募らせることこそが、正しく機能しているという証なのか」
「その通りです。優秀なロボットを造ることは容易い。しかし、それによって人間の仕事が全て、奪われたら洒落にはなりません。人の作業を適度に残しつつ、イジメの対象になってストレスを発散させ、仕事の能率を上げてくれる。私が一年前に言った通り、会社の役に立っているでしょう?」
「確かに・・・。博士は、そのことを私に教える為においでになったのですか?」
私はすっかり、頭が上がらなかった。一年前、博士のことを内心で馬鹿にしていたが、本当は私の予想を超えた考えを持っていたのだから。
「はい。私がやってきたのか、事情を説明する為と・・・」
博士はスパナを取り出すと、それで思いっきり、起き上がろうとしていたロボットの頭を激しく叩き、
「こうやって、この一年間のストレスを発散する為でもあるのですよ」
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