糸の方へ

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妻由 麦(つまゆ むぎ)は高校生になった。 いまだに運命の糸というものを信じている。しかし、周りの皆がそういったことを信じていないことは知っていた。だから特に友達にも言わない。中学校生活の間そうしてきた。 もちろん、彼女が幼いときは話が別で幼稚園や小学生低学年の頃は「誰と誰が結ばれている」とよく声を大にして言っていた。いつの頃からか、皆は気味悪がっていたし先生から注意もされていた。しかし、彼女には不思議だった。どうして皆は糸の話をしないのか、と疑問に思っていた。赤くはないけれど運命の糸は常にまとわるように目の前にあるのに。そう妻由は信じるよりもそれが絶対であり常識だと思っていた。 そもそも皆にはこの糸が見えていないんだ、妻由がそのことに気付いたのは小学校生活も残すところ半年という頃だった。そういった点で彼女は馬鹿だったと言える。その点を除けば賢く可愛く、可笑しなところはなく、皆から親しまれ慕われ仲がよかった。 私は今まで天然ちゃんとか不思議ちゃんとか言われて、そうやって乗りきってきた。私自身をごまかして。だから中学デビューって時はよくあるような女の子になろうと決めたし、実行もした。当然小学校の同級生もいたからキャラチェン?、なんて聞かれたし、それを肯定すると何人かは少し残念がってくれた。でも、なぜか、その三年間はつまらなく感じてしまった。 だから高校デビューでは私のこの個性を少しなら活用してもいいんじゃないかなって思った。キューピッドになってみようかなぁ、なんて。 私は高校デビューで殻を破ろうと頑張り始めた。自分のためにも使いたくなってしまったから。
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