夏休み そのⅠ

3/44
5317人が本棚に入れています
本棚に追加
/623ページ
中庭に転移したところ、まだ早朝だし夏休みなので周りに人はいなかった。 姐さんと出会った木を見ると、前みたいに木の枝の上にいた。 俺は猫の姿になる。 椿『おはよう、姐さん』 姐さん『ツバキか。おはよう。 早いねぇ』 椿『早めに行って城の中を探検しておこうと思って。 で、城についたら中では別行動。 帰るときは、コレで音鳴らして俺を呼んで。 嫌かもしれないけど、首とかに着けて。 もし見られても、来賓の飼い猫か使い魔だと思われるだろうし』 俺は小さな鈴を渡す。 姐さん『これはこれは…ずいぶんと猫らしいアイテムだね。 でもコレは中が空洞だから、振っても音は鳴らないよ』 椿『周りには聞こえないけど、俺にはしっかり聞こえるから大丈夫。 強く振ったらすぐに姐さんのところに行くから』 姐さん『分かったよ。 なら行こうか』 椿『あぁ。 転移するから、少し触るな?』 鼻先を姐さんの肩ら辺りに少しだけ触れて転移した。 足元の土が消えて一瞬の浮遊感のあと、再び足元に固い土が当たる。 姐さん『…此処は…』 椿『もう城の中だよ。 ここは城にある庭のひとつで、城の敷地のなかで一番西にあるから』 姐さん『そうかい。ありがとうねぇ、ツバキ。 なら、私はもう行くよ』 椿『あぁ。また後でな』 姐さんはヒラリと木の上に飛び上がり、そこから姿を消した。 椿「…さて、俺も行くかな」 人間の姿に外見を変え、気配と姿を消して俺は巨大な白亜の城の中に侵入した。
/623ページ

最初のコメントを投稿しよう!