夏休み そのⅠ

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城の中は暑くも寒くもなかった。 魔法効果だな。 床は大理石でできており毎日磨かれているからか、ピカピカだ。 壁にかかっている絵画や壺などが床に映っている。 その映っている絵画や壺も見るからにお高そうなものだ。 そんな廊下をこの城に仕えるメイド達や執事達が、さっきからわたわたと忙しそうに歩き回っている。 俺はそれを影からこっそりと見ていた。 メイドa「9:00には就任式が始まるから、急がないと!!」 メイドb「来賓の貴族様方も、もうどんどんお越しになっていらっしゃるし… 粗相の無いように働きましょう」 メイドa「はい!」 労働意欲のある娘さん達だな。 二人の話によると、約1時間後には始まるらしい。 椿「(それまでテキトーに探索するか…いや、でもなぁ)」 城の中を探検するには日にちを間違えたな。 こんなに忙しそうに回るなか、下手に動いて彼女達の労働を邪魔したくない。 椿「(探索はまたの機会にするか…)」 俺はなるべく邪魔になら無いよう(まぁ、俺の姿は見えないけど)、人の少ない方へ向かった。 そしてたどり着いた場所は、人気(ひとけ)がほとんど無い廊下だ。すると、 ?「…から、……してちょうだい」 ?「大丈夫です……ですから……わかっております」 ボソボソと何やら怪しい会話が聞こえたので、そちらの方にいくと、 椿「(防音製の部屋、か。 普通なら音は漏れないが、俺の聴力は拾うんだよな… つーか、結界を張らないということは、そこまで重要な話をしてるわけではないってことか? にしても随分と扉が豪華だな。 この部屋の主は相当位が高いと思うけど…)」 今まで見てきた城の部屋の扉としては、一番豪華だ。 大きさもあるし、この部屋がある廊下に他に部屋は1、2つしかない。 つまり、この部屋は他の部屋よりも広い。 なにより此処の廊下は大理石ではなく、ふかふかの絨毯が敷いてある。 明らかに他とは違う。 椿「(王族の部屋だったりして…でも護衛がいなかったし、違うか)」 俺はそこをあとにした。
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