夏休み そのⅠ

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全帝「もう少し具体的に話してくれないか?」 椿は何処からか地図を取り出してある周辺を指す。 椿「今はここら辺。 でもアイツら、転移の魔石を使って移動してるから、そろそろ身体強化して走って逃げると思う。 そうしたらもう追跡は無理」 全帝「そうか…」 全帝さんはなにか考え込む。 椿「…あのさぁ、俺が言うのも何だけどあんたら俺の事信じるの? 俺の身元も分からないのに?」 コイツ…自分から怪しまれるような事を言い出しやがって。 全帝さんは難しい顔をするが、光帝さんは表情を変えず答える。 光帝「そうね、私たちは貴方の事をほとんど知らない。 でもカナメ君は貴方と親しそうだから、不審人物ではないと思ってるの」 椿「要を信用してるから俺も信用する、と?」 光帝「えぇ。 それにもしあなたが不審人物なら、カナメ君は貴方をすでに拘束しているはずだしね」 ニコッと優しく俺に微笑む光帝さんは、決して警戒心が薄いわけではない。 寧ろ、警戒心は強い方だと思う。 でもその警戒心を、この柔らかな笑顔と言葉の下に隠してしまう人だ。 要「コイツは俺の友人です。だからコイツの身元は保証します」 すると全帝さんは、分かったという。 全帝「では、彼の名前を教えてくれないか?」 椿「“ツキ”だ。 その他の個人情報は秘密」 光帝「ツキ君ね、よろしく」 コイツ…超ナチュラルに嘘つきやがった。 違和感が全くない。 “ツキ”って本名の真ん中の文字抜いただけじゃん。 安直だな。 そう思っていたら、椿が突然こちらを向いた。 要(コイツ、また心読んだ!?) 椿[読まねーよ。勘だ。 それよりも別にいいだろ、ツキで。 お前も、俺がこの格好の時はそう呼べよ。 下手に情報バレてリア達に、被害がいかないようにしたいからな] 要[分かった。 でも帝の人達は、一般人にむやみに関わらない] 椿[リアとリオンは特殊な種族でいつ利用されるかわからない。 だからその可能性に繋がる事は、小さな事でも潰すべきだ] 椿は念話をしながらも、既に全帝さんと会話して打ち解けている。
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