プロローグ

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1-2  しかし、いつもは誰かがいる時でなければ現れないのに、思えば、こういうことは初めてだった。 『気づいているかと訊いている』  アルスが深く息を吸い込んだ。 「ああ、降り方も穏やかになってきた」  それきり、水飛竜は黙ってしまう。  天から救い出してきたときは、塔の地下に永く幽閉されていたために皮膚は黒くただれ、翼も骨組みしか残っていない状態だったが、今はそのときの姿が想像もつかないほど白く美しい鱗をかがやかせている。  ふと、これまでにないくらい大きな眼をして、アルスを見つめてきた。
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