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1-3
ただならぬ気配を感じ、アルスは言った。
「そうか、わかった。行ってしまうんだな」
『水は我の血だ。我が自由に飛行することにより、水は均衡を保って循環する』
「ああ。それで、出発の挨拶に来てくれたのか」
『長殿は、我を縛りつけてはいないのに』
アルスが水飛竜の襲来で濡れてしまった上着を脱ぎ、もののついでにまだいくらか雨に濡れたままのちいさな背から水滴を拭きとった。
水飛竜は別れを惜しむようにじっとしているが、うっかり頭や顔に触れようとすると反射的に牙を剥くと知っているので、そこは拭いてやることができない。
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