Chronicle‐Ⅲ 信頼と契り

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数多ある仕事の中で、俺は他職を経験した上で”ウォーター・ビジネス”を択んだ。 今もそうだが、当時もこの業種への社会的風当たりは厳しかった。 見えない社会の階級では底辺にでも入るが如くの物言いをされた事も少なくない。 新卒で東証1部上場企業であり地元では公共性の高い大手企業に就職していた俺が、ナイトレジャー産業に入った時、多くの方々から苦言もいただいた。 『もったいない』 『一生食いっぱぐれない仕事なのに』 『将来の保証は何もないのに』 『なんでそんな仕事を』 きっと彼らにはわからないのだろう、バブル崩壊以降この国には将来の保証を出来る制度すらない事実を。 仕事はお金を稼ぐ手段である以上に自らの人生の多くを捧げてもっとも大切なプライドを構築する事実を。 俺は限りある人生を働き甲斐もない仕事に従事して、 『昔はあんな仕事をしてみたかった』 などとぼやく大人になんかなりたくなかった。 そして何より俺は男だ、業種は何であれ組織に埋没し口に糊をする人生など真っ平ごめんだ。 男は何かを成す為に生きているのだから。 そんな俺の人生観にナイトレジャー産業はピッタリと一致している、これは仕事ではないナイトレジャーと言う生き方を選んだだけなのだ。 ナイトレジャーを択ぶ、それも男の生き方のひとつ。 Chronicle to Demio→
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