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その頃、中学で敵無しと言われていた自分の耳に、ステルスの名前は当然のように入ってきた。
そしてそれは、他の学校の人間、暴走族の人間の耳にも入っており、いつの間にか、ステルス狩りが始まった。
ステルスの情報は、皆無に等しく、何の進展もなかった。
そして、ステルス狩りが始まってから一週間経った日の夜。自分がいつも行動を共にする、悪友の竜斗と、ステルス狩りのために、夜の街を歩いていた時、俺は初めてステルスを目撃したのだった。
あれは、深夜一時三十五分。
「なぁ勇二。実はステルスの頭って居ないんじゃねぇか?」
タバコを吸い、薄暗い道を歩きながらステルスを探している時に、自分の隣を歩いている竜斗が言った。
ステルス狩りを始めてから、今日で一週間。
全てにおいて謎に包まれていて、レーダーに写らないとまで言われている人間を探すことは、容易ではないと覚悟していたが、一週間で音をあげるのは、早すぎると俺は思った。
「まぁ、何の情報もねぇ――」
竜斗の不満に付き合ってやろうと思い、口を開いたのだが、ふっと今歩いている所からすぐ近くに、小さな公園があるのを思い出した。
そして、何気なくそちらの方を見てみると、人影が公園の中へ入って行くのが見え、俺は言葉を切った。
俺の動きや、言葉を切った事を不思議に思ったのだろう竜斗が、?(ハテナ)を顔に貼り付け、俺の顔を覗き込んできた。
「奴だ!!」
確信はないが、直感的な勘で、俺は短く言った。
「エッ!?何処だ?…あっ待てよ!」
気付いた時には、俺は走り出し、竜斗の声を背中に浴びながら、公園へと向かって走っていた。
暗い道を走り、外灯のない公園の入り口で立ち止まり、公園内を見た。その公園の中で俺は、ステルスなる戦闘士の圧倒的な強さを目の当たりにした。
公園の中。B-BOYファッションでよく見られるダボダボのズボンに、大きめのパーカー。
ステルスの機体の色は黒なので、服も黒なのかと思っていたが、上下とも想像と違い、真っ白だった。
そんなステルスは、スッポリとパーカーを被っているため、顔は全く分からなかった。
そして、そんな真っ白の服に身を纏ったステルスの前には、昔からある暴走族。「革命」の総長、藤木 誠と、革命と背中に大きく金の刺繍が入れてある、黒や白の特攻服を着た少年達が立っていた。
「一対六とか卑怯じゃねぇか?」
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