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隣から、竜斗の小さな声が耳に届いたが、俺はそれに答えず、黙ってステルスと革命のやり取りを見ていた。
藤木がステルスに何かを言っているようだが、何を言っているのかは、全く聞こえなかった。
話がこじれたのか、革命のメンバー五人が、一斉にステルスへと向かった。
一人一人の動きがよく見えているのか、ステルスは、軽々と風のようにパンチや蹴りをかわし、無駄な動きなく、一人一人を一発で倒していった。
「すっ……すげぇなアイツ…」
隣でステルスの動きを見ていた竜斗が言った。自分も、竜斗の言葉に同感だったが、何も言えず、ただ首を縦に振ることしかできなかった。
ステルスは、三分も経たない内に、五人を倒していた。
残った藤木とステルスは、睨み合っているのか、数秒間立ち止まっていたが、ゆっくりと二人は距離を縮めていった。
突然、藤木がステルスへ向けて、右ストレートを放った。
ステルスはそれを素早くよけ、藤木の腕を掴むと、その腕と共に、体を藤木の背後へと移動させた。
「グアァァァァ…」
暗闇の中に、藤木の絶叫が響いた。
何が起こったのか、知らない人間が、この絶叫を聞けば、間違いなく110番通報するだろう。
藤木の腕を放し、ステルスが一歩後退した。
すると、右腕を押さえる藤木の横面に、右の回し蹴り。
見事に弧を描き、藤木の横面へ、吸い込まれるかのように、ステルスの右回し蹴りがヒットした。
同時に、
スパーーンッ!!
と、暗闇の中に、乾いた音が響いた。
ステルスの右回し蹴りを受け、藤木の体は湿った土の上に薙ぎ倒された、そのまま動かなくなった。
「つっ…強いなアイツ…」
自分の正直な気持ちが口から零れていた。
そして、言い終わると同時に、自分の足はステルスの方へと向かい、走り出していた。
「おっおい勇二!?」
竜斗の声が後ろから聞こえたが、俺はそれを無視し、真っ直ぐにステルスの方へと走った。
俺の足音に気付いたのだろう。ステルスが、俺の方へと顔を向けた。
パーカーで 覆われた顔は、よく見えなかったが、俺は構わずにステルスの顔面へ、右の拳を叩き込もうと、右手を振り上げた。
すると、突然ステルスが、体を回転させた。
バックブロー。
(ヤバイッ!)
多少喧嘩に慣れた体から、警戒音が鳴った。
俺は咄嗟に左足を踏ん張り、上体を仰け反らせた。
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