~ 第 一 章 ~

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ビュンッ! と、目の前でステルスの放った拳が空を切る。  なんとか当たらずに避けたが、ステルスが向かってきた。 (体勢が悪すぎる!?)  そう思っていたら、蹴りをくらい、俺は尻餅をついていた。 (なんだ?今の蹴りは…?)  そう思ってステルスの方を見ると、ステルスは俺へ拳を突き出して見せた。  パーカーが影になり、ステルスの表情はわからない。  すると、ステルスは踵を返し、公園から走り去って行った。 「おい勇二?お前何でこけたんだ?」  ボーッと立つことも出来ず、ステルスが走り去った方を見ていると、後ろから竜斗が声を掛けてきた。 「あぁ?見えなかったのか?蹴られたんだよ!小ガキ生でも避けれそうな軽い蹴りでよ!」  遊ばれたと感じた。喧嘩は、自分なりに強いと思っていた。  だが、ステルスに簡単にこかされ、遊ばれたと感じたことで腹が立ち、つい口調が荒くなってしまった。 「あぁ………クソッ。痛ぇなぁ」  声がした方を見てみると、革命の頭、藤木が立ち上がろうとしていた。 「勇二か。見てたのか?あのステルスって野郎、俺の腕を簡単に折りやがったぞ」 (やっぱりアイツがステルスか…)  藤木の言葉で、白い上下の服を着た男がステルスだと、100%の確信をもった。 「まさか、お前の兄貴じゃねぇよな?」  藤木がボソリと小さな声で言った。 「はい?有り得ないッスよ!!あんな喧嘩強くないですよ、うちのガリ勉兄貴」  藤木の言葉に、俺は素直な解答を述べた。  有り得ないとは思ったが、俺はその日家に帰り、兄貴の部屋を覗いた。  が、部屋は真っ暗で、兄貴はベッドの中で静かに寝息をたて、眠っていた。    〇   〇   〇  中学時代に戻っていた記憶を引き戻し、耳障りな機械音を繰り返す携帯電話の終了ボタンを押し、ポケットへ入れた。  今の電話の相手は誰か? 何故自分の携帯の番号を知っているのか? 何が目的なのか? わからない疑問が、幾つも交差した。  やり場のない怒りが込み上がってきた。 その怒りが、何に対しての怒りかは、分からなかった。  そんな訳の分からない怒りを抱いたまま、さっきの女を、もう一度抱きに行こうかと考えたが、俺は携帯を取り出し、乱暴にソラで覚えている、兄、河原 真希緒の携帯の番号を押した。  そして、携帯を耳に当てた。呼び出し音が鳴るまでに、時間が掛かった。
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