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ビュンッ!
と、目の前でステルスの放った拳が空を切る。
なんとか当たらずに避けたが、ステルスが向かってきた。
(体勢が悪すぎる!?)
そう思っていたら、蹴りをくらい、俺は尻餅をついていた。
(なんだ?今の蹴りは…?)
そう思ってステルスの方を見ると、ステルスは俺へ拳を突き出して見せた。
パーカーが影になり、ステルスの表情はわからない。
すると、ステルスは踵を返し、公園から走り去って行った。
「おい勇二?お前何でこけたんだ?」
ボーッと立つことも出来ず、ステルスが走り去った方を見ていると、後ろから竜斗が声を掛けてきた。
「あぁ?見えなかったのか?蹴られたんだよ!小ガキ生でも避けれそうな軽い蹴りでよ!」
遊ばれたと感じた。喧嘩は、自分なりに強いと思っていた。
だが、ステルスに簡単にこかされ、遊ばれたと感じたことで腹が立ち、つい口調が荒くなってしまった。
「あぁ………クソッ。痛ぇなぁ」
声がした方を見てみると、革命の頭、藤木が立ち上がろうとしていた。
「勇二か。見てたのか?あのステルスって野郎、俺の腕を簡単に折りやがったぞ」
(やっぱりアイツがステルスか…)
藤木の言葉で、白い上下の服を着た男がステルスだと、100%の確信をもった。
「まさか、お前の兄貴じゃねぇよな?」
藤木がボソリと小さな声で言った。
「はい?有り得ないッスよ!!あんな喧嘩強くないですよ、うちのガリ勉兄貴」
藤木の言葉に、俺は素直な解答を述べた。
有り得ないとは思ったが、俺はその日家に帰り、兄貴の部屋を覗いた。
が、部屋は真っ暗で、兄貴はベッドの中で静かに寝息をたて、眠っていた。
〇 〇 〇
中学時代に戻っていた記憶を引き戻し、耳障りな機械音を繰り返す携帯電話の終了ボタンを押し、ポケットへ入れた。
今の電話の相手は誰か?
何故自分の携帯の番号を知っているのか?
何が目的なのか?
わからない疑問が、幾つも交差した。
やり場のない怒りが込み上がってきた。
その怒りが、何に対しての怒りかは、分からなかった。
そんな訳の分からない怒りを抱いたまま、さっきの女を、もう一度抱きに行こうかと考えたが、俺は携帯を取り出し、乱暴にソラで覚えている、兄、河原 真希緒の携帯の番号を押した。
そして、携帯を耳に当てた。呼び出し音が鳴るまでに、時間が掛かった。
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