~ 第 一 章 ~

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~ 第 一 章 ~

「バイバ~イ」 「じゃあまた明日ね」  放課後の教室で、別れの言葉を、笑顔で男女の生徒達は交わし、教室から出て行った。  そして、教室に残っているのは、俺以外には、掃除当番の男女二人だけだった。 「帰るか…」  誰に言うでもなく、俺は自分の席を立ち、鞄を持ち、教室を後にした。 「ヨッ!今から帰るの?」  マク○ナルドの店員が放つ、スマイル以上の笑顔で、隣のクラスの真紀が、片手を上げながら言ってきた。  俺は、この女が苦手だった。  俺とは全くの正反対で、ウルサイ女。そして、この女は兄貴と付き合っている。  それらがこの女を苦手とする理由だ。  俺の兄貴は、頭が良く、真面目。  落ちこぼれ、不良、役立たず、と後ろ指差されている俺とは、真逆だった。 「ねぇ、一緒に帰ろう」  無視して歩く俺に、真紀はしつこく話し掛けてきた。  俺は、更に無視を決め込み、鞄の中からMDウォークマンのヘッドホンを取り出し、再生を押してから、ヘッドホンを首に掛けた。  爆音で、ヘッドホンからは、HIP-HOPのBGMが、漏れ聴こえてきた。 「もう、泣き虫勇二!今日も――」  しつこく話し掛けてくる、真紀が発した¨泣き虫¨の言葉に、俺は敏感に反応してしまい、その場に立ち止まり、真紀を睨み付けた。  俺に睨まれた真紀は、途中で言葉を失い立ち止まったが、俺の顔を一瞥すると、クスッと笑い、 「何怒ってんの?早く帰ろ!」 と言って、俺の耳を掴むと、引っ張り、校門へと向かって歩き出した。 「いてぇよバカ!」 俺は、そう真紀に怒鳴りながら、こいつには勝てねぇなぁ、と心の中で思っていた。  真紀のしつこさに負け、二人並んで校門を出た。校門を出てから、愛車を停めてある、学校のすぐ近くにある駐輪場へと向かい、歩いて行った。 駐輪場へと向かいながら、真紀はひたすら他愛のないことを、喋り続けていた。  俺は、歩きながら真紀の「ねぇ?」や「そぅ思うでしょ?」といった言葉に、当たり障りのない相槌をうった。  駐輪場へ着き、愛車であるビッグスクーターのマジェスティーにキーを差し込み、ONへ回してから、アクセルと同時にセルを回し、エンジンを始動させた。  爆音と共に、エンジンが唸ると、全ての電気回路がONになり、スピーカーからEMINEMの声と、低音や高音がうまくMIXされたBGMが流れてきた。
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