~ 第 一 章 ~

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「ねぇ、こんなキモイガキ、早くヤッちゃってよ!」  男にチャラチャラした女が、苛立たしげに言った。 「俺がコイツに勝ったらヤラせろよ!」  俺は、女を睨み付けて言った。 「お前、俺に勝てると思ってんのか?」 女の前だからであろう、男が自信ありげに言った。 「おいおい、クレイジーなこと言ってないで、かかって来いよ!」  タバコを吹かしながら、俺は余裕の表情を崩さずに、男に言った。  相手に刺激を与え、先に手を出させる、自分からは、決して手を出さない。  それが、自分の憧れるB系集団の決まり。 「何してんの?早くしてよ!ビビッてんの?」  この女の一言で、男は覚悟を決めたように、殴りかかってきた。  衝撃。  左の頬を殴られた……殴られてやったと言った方が正しいか。  その一発が合図。右手に持っていたタバコを、二発目をと考えていたのだろう、右手を振り翳していた男の顔に飛ばした。 「うぁっ!?」  タバコが顔に直撃し、火の粉が舞うと、男は情けない声を上げ、後退りをしていた。 「雑魚が!」  ぼそりと言い、男の腹部を殴る。「うっ」と唸り、体をくの字に折った。  ちょうど良い高さに下がった顔面に向け、思いっ切り下から上へ拳を振り上げた。  ガツンッ!  拳から、男の鼻が潰れたのが伝わり、快感で全身が粟立った。  男を見ると、アスファルトの上で、大の字になっていた。  女は、彼氏の哀れな姿に、ボー然と立ち尽くしていた。 「おい!後ろに乗れよ」  愛車のマジェスティーに跨り、立ち尽くす女へ言うと、一瞬体をビクッとさせ、俺を見たが、諦めたかのようにマジェスティーの後ろに跨った。  マジェスティーに女が乗ったのを確認してからアクセスを回し、マジェスティーを発進させた。  ポケットから携帯を取り出し、時間を見た。  携帯のディスプレイ画面には5:42とあった。  携帯をポケットへしまい、マジェスティーを知り合いの働く、カラオケ店へと向かって走らせた。  約五分程で、目的のカラオケ店へ到着した。  専用の駐車場へ、マジェスティーを停め、ロックした。 「じゃあ、行こうか」  連れて来た女に、俺はさっきとは違い、笑顔を向けて言った。  さっきとは、別人のような俺に驚いたのか、ウンウンと声は出さずに、首を縦に振っていた。
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