~ 第 一 章 ~

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「勇二だけど、貴志君さっき俺にコールくれた?」  doubleから電話を掛けてきたのは、貴志だろうと思っていたが、違っていたらいけないので、浩司にした質問を貴志にもしてみた。 『あ~、したぜ。今日店に来るのか聞こうと思ってな』  貴志のあっけらかんとした口調が、受話口から耳に届いた。 「今日は行かないけど…用はそれだけ?」 『そうだけど、それだけじゃ不満か?』  自分の言葉に、貴志は気を悪くした風はなく、いつもと同じ、明るい口調で言った。 「別に…OK。じゃあ」  普通に電話でのやり取りを終え、携帯の終了ボタンを押した。 「さぁ~、何しよっか―――」  携帯を持ったまま、両手を高々と上げて、一人自分の気持ちを声に出して言おうと口を開くと、その言葉を遮り、右手に持った携帯から、EMINEMの“Brain Damege”が流れた。  右手で、震える携帯のディスプレイを見ると、¨非通知¨の文字。  どうしようか迷ったが、しつこく鳴り続けるEMINEMの着うたに負け、仕方なく通話ボタンを押して、携帯を耳に当てた。 「もし~」  俺は、わざと明るく言ってみた。電話の相手は、何も言わなかった。  イタ電か?と思ったが、周りに人が居るのか、ザワザワと人の話し声が微かに聞こえた。  右手で携帯を持っているため、左手で耳を塞ぎ、電話の向こう側の声を聞こうとしてみたが、何を喋っているのかは、わからなかった。  やはりイタ電かと思い、電話を切ろうと思った時、 『おい!!テメー真希緒の弟だろ?真希緒に言っとけ、[ステルス]潰してやるってな!』 突然暗く、低い声で、電話の向こうの見えない相手が、一方的に喋り、そして、喋り終えたかと思うと、電話は切れ、乾いた機械音だけが、 “プーップーップーッ…” と耳に響いた。    〇   〇   〇  去年の冬。  自分がまだ、中学三年だった頃。  あの頃から、B系集団[ステルス]の名前が、よく耳に入るようになった。  B系集団[ステルス]。そのチームには、始めは名前がなかったのだが、そのチームのトップの人間の、年や名前、何処の誰かといった、全てが謎であり、チームの人間も知らない状態で、何処に居るのかもわからない、そして何処から現れるかもわからないといった状態から、いつの間にか【レーダーに映らない人間(戦闘機)】[ステルス]と呼ばれるようになった。
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